インボイス発行事業者の登録を取りやめたい場合は、いつまでに手続きをすればよいのでしょうか?
― M社 ―
M社経理部古門部長と顧問税理士が、打ち合わせをしています。
今年の年末に、先代社長である相談役から弊社が弊社の社屋を買い取ることになっていますよね。
そうですね。
そうなると、相談役の所有する貸付不動産が、居住用マンションのみになるんですよ。
そうでしたね。
なので、来年からはインボイス発行事業者でなくてもいいわけですよ。
確かにそうですね。
他に事業者との間で取引がなければ、インボイス発行事業者である必要はありませんね。
なので登録をやめたいのですが、手続きが必要ですよね?
そうですね。
事業廃止や死亡など一定の場合を除き、登録をやめるには「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を税務署に提出する必要があります。
届出書なら、年末までに提出すれば来年からインボイス発行事業者ではなくなりますか?
登録の効力が失われるのは、原則、届出書を提出した日の翌課税期間の初日ですが、その効力を得るには、翌課税期間の初日から起算して15日前までに届出書を提出する必要があります。
つまり、相談役は、今年の12月17日までに提出しなければなりません。
えっ、他の届出書とは違うんですか?
そうですね。
この期限を過ぎて提出すると、失効日は翌々課税期間の初日となり、1課税期間遅れます。
危なかった……。
聞いておいてよかったです。
こちらの方こそ、取引が予定されているにもかかわらず、気づかずに申し訳ありませんでした。
聞いていただいて、よかったです。
12月17日までにその届出書を提出すれば、相談役も来年から免税事業者になりますね。
これまで基準期間の課税売上高は、1,000万円に満たなかったわけですし、課税事業者選択届出書を提出しているわけでもありませんから。
そうですね。
現状、消費税の免税事業者がインボイス発行事業者となった場合は、原則、2年間は免税事業者に戻ることができません。登録失効後も強制的に課税事業者となる場合がありますが、相談役の場合は、令和5年10月1日のインボイス制度スタート時からインボイス発行事業者となっていますから、この取扱いからは外れます。とはいえ、仮にこの取扱いが適用されたとしても、今年の年末でこの2年の制限から外れますから、いずれにしろ、基準期間の課税売上高が1,000万円に満たないのであれば、基本的には免税事業者に戻ることができます。
念のため、相談役に取りやめの手続きを行うか確認します。
先生もご同席をお願いします。
承知いたしました。
よろしくお願いします。